Drone ドローン 技術

制御技術

ドローンを飛行させるためには下記の制御技術から、性能、コストに合わせて組み合わせ構成しているのが一般的である。

  • IMU 慣性計測装置
  • GPS
  • コンパス
  • 気圧・高度センサ
  • 超音波測距
  • 画像処理

 IMU 慣性計測装置は加速度センサー、ジャイロセンサーを備え、機体の姿勢と挙動についてリアルタイムに検出しこれをモーターの出力にフィードックすることで、ドローンの安定飛行に不可欠な要素となっている。加速度センサーとジャイロセンサーを組み合わせた6軸センサー、さらに地磁気センサーを加えた9軸センサーがあり、より正確な制御が可能となっている。MEMS技術により、センサーの小型化と軽量化が可能になり、ドローン開発が一気に進んだとも言われる。
 GPSはカーナビゲーションシステムで普及したように、衛星からの電波を利用した、地球上の現在位置を測定するためのシステムである。
ドローンでは機体の水平位置を一定に保つために用いられる。GPS制御がない場合、ドローンは風の影響で流され、位置を一定にするためには操縦者は送信機で常に操作しなければならない。
 またウェイポイントを設定した自動航行ではGPSは不可欠である。GPSによって現在位置を取得し、ウェイポイントに対して距離と方向をリアルタイムに検出、ドローンの制御にフィードバックします。
 自動帰還を実現するためにもGPSは不可欠です。離陸した場所、またはホーム位置とした場所に、ドローンが自律的に移動し着陸する機能を実現します。自動帰還は操縦者の指示で行う他に、機体に何らかの異常が生じた場合に自動帰還モードに入ることがあります。バッテリー電圧が規定以下に低下した時、送信機との接続が切れたときに自動帰還モードに入ります。(注.機体の設計、使用によってこれらの機能は変わります)
 コンパスは地磁気を検出することで機体の方向を知ります。機体の方向は自動航行や自動帰還の実現に必要な情報です。飛行中のドローンの位置と方向を地図上に表示するシステムでは、GPSおよびコンパスが必要です。
 気圧センサーはドローンの高度を知るために使われます。高度を一定にする飛行モードの実現や自動帰還の実現に必要です。高度を検知する方法には気圧センサーのほかに、GPSデータを使った方法もあります。それぞれ測定精度や外乱の受けやすさなどが異なるため、アプリケーションに応じて選定するか、互いに補完するように組み合わせて使うのが良い。
 超音測距は主に低高度での高度検出に使われる。機体下方に向けられた超音波センサーは地面からの超音波の反射波を計測し距離を算出する。地面の状態、水面や草の上では測定精度に影響を与えることがある。
 画像処理を使った制御方法はジェスチャーコントロールや衝突回避に使われる。

ドローンの制御方法では高度維持モード(ALT Hold)、位置安定モード(スタビライズ)、マニュアルモードなどを持つものがあります。高度維持モードは高度センサーを使って一定の高度で飛行するモードです。操縦者の上下の操縦に対して機体は鈍感に反応します。位置安定モードはGPSを使ってドローンの位置を一定に保とうとします。横風を受けてもドローンはその場所を保とうとします。その反面操縦者の前後左右の操縦に対して機体は鈍感に反応します。マニュアルモードは高度維持や位置安定といった機能をオフにした状態といえます。風などの影響を受けやすくなる半面、操縦者の操縦に対して機体は敏感に反応します。スポーツモードと呼ぶ機体もあります。

メンテナンス

 安全な飛行にはドローン技術の正しい理解と、日ごろのメンテナンスが不可欠です。
IMUのキャリブレーションは機体の姿勢安定性に大きく影響を与えます。キャリブレーションが不完全のままでは、機体の水平姿勢を間違って制御してしまうことがあり、姿勢を安定に保つことが難しくなります。
モーターの回転をおこなうESC(アンプ)のキャリブレーションを行わなければならない。アンプの出力特性にばらつきがある場合、各モーターの出力が揃わず離陸時の不安定さにつながる。
 コンパスのキャリブレーションは地磁気を正しく受ける場所で行います。鉄筋コンクリートの建物内や鉄骨の倉庫の中、強い磁気を発する設備のそばでは地磁気を正しく検出できず、キャリブレーションができません。コンパスキャリブレーションでエラーが出る場合は、地磁気を正しく受けることができる場所に移動して再度キャリブレーションを試してみましょう。
 バッテリーが原因のトラブルが意外と多いものです。飛行前にはバッテリーの電圧確認のほかに、セル間のバッテリーバランスの確認も必要です。セル間のバランスが大きくずれているバッテリーは、バッテリーの残量が低下したことと同じことになり、飛行可能時間が短くなります。バッテリーは定期的にバランス充電を行うことと、寿命を迎えたバッテリーは早めに交換することが必要です。バッテリーの寿命はその使い方によっても変わります。使用頻度や環境温度によっても寿命に影響を与えます。強い衝撃を与えたバッテリーは注意が必要です。落下や何らかの衝撃がバッテリーに加わることで、バッテリー内部が破損し、バッテリーの機能に影響を及ぼすほかに、発煙、発火の原因にもなります。バッテリーの外観に異常がある場合、異常に膨張しているなど確認された場合は、バッテリーの使用を中止します。
モーターは使用時間が経過することで摩耗します。電源を入れる前に手でモーターを回したときに違和感がある場合は軸受けが摩耗している証拠です。プロペラをつけずにモーターを回したときに、ゴロゴロといった異音や、普段にない振動がある場合も、軸受けの摩耗が考えられます。早めの交換をお勧めします。多くのドローンで採用されているモーターは内部のコイルの状態を見ることができます。コイルが変色している場合は、コイルの焼損や、異常な発熱の影響が考えられます。モーターに異常な負荷がかかった場合にこのような現象になります。モーターの交換をお勧めします。交換したモーターでも早期にコイルが変色する場合はモーターにつながるESCの異常も考えられます。
 プロペラの状態も確認しましょう。プロペラに破損や亀裂がある場合は早めに交換します。高速で回転するプロペラに異常が発生した場合、飛行中であれば墜落の危険性もあります。ひとたび墜落すれば、機体の破損以外に、人や器物に重大な損害を与えます。些細な傷でも早めの交換を心がけます。

事故例

ドローンの事故は他別すると次の3つに分類できます

  • 機体のトラブル
  • 操縦ミス
  • 外的要因

機体のトラブルはメンテナンスの不十分が原因することがあります。不完全なキャリブレーション、バッテリーの不具合、モーターやプロペラの劣化などが考えられます。
操縦ミスには様々なケースがあります。ドローンが操縦者から遠く離れている場合、その距離感は正確さを失います。高度と距離を正しく認識できず、立ち木や建造物と接触し墜落ケースは少なくありません。遠くまで飛ばしたときに機体を帰還させる前にバッテリー電圧が低下して墜落するケースもあります。建造物そばに吹くビル風や乱気流といったものに巻き込まれ操縦不能の末、建造物と衝突、墜落するケースも操縦ミスといってよいでしょう。地形やその日の天候、風向きを考慮し、安全な飛行プランを立てることはドローン操縦者に必要な技術です。ドローンが建造物などの陰に飛行したとき、送信機との接続が切れることがあります。もしフェイルセーフ機能を持たなければ、機体は暴走することでしょう。フェイルセーフによって自動帰還する場合もそのルート上に何らかの障害物があれば、衝突、墜落を起こします。ドローン操縦は基本的に有視界飛行が義務付けられています。送信機との接続が途絶えるような状況、建物の陰や木立、山の向こうまで飛行させてトラブルが起きたとしたら、これも操縦ミスと言ってよいでしょう。
 GPSは衛星からの電波を受けるのですが、機体と衛星の間に障害物がある場合は、正しくその電波を受け取ることができません。山間の空間、ビルの谷間では、取得できる衛星電波の数が不足し、機体の正確な位置を取得することができません。間違った位置に認識されることもあります。これはスマートフォンを使ってビル街で地図アプリを見たときにも同様の現象を体験することができます。
 電波の乱反射はマルチパスを発生させます。これによって位置測定の結果が突然ジャンプすることが起こりえます。位置安定モードでこの現象が発生すれば、機体は突然暴走したかのようにその位置を大きく変えようとします。周りに障害物があれば、即座に衝突を起こします。これは外乱によるトラブルと言ってよいでしょう。高度が高い空間では障害物による電波障害の影響は少なくても、地上付近に近づくにつれて電波障害の要因は増えてきます。電波状況に応じて安定モードからマニュアルモードに切り替えることで安全な飛行を行うことができます。

ログ解析

 機体によって、飛行中の機体の状態及び操作の記録をログとして記録するものがあります。それはSDメモリーカードに記録されます。トラブルが発生した機体も、SDカードを無事回収できれば、飛行ログからトラブルの原因を分析することが可能です。ドローンメーカーではログを解析し、トラブルの原因が操縦者によるものか、それとも機体によるか特定することがあります。機体に不具合があったことが分かれば、その機体を修復するにあたってメーカーの責任において行われます。機体を紛失したり、水没させSDメモリーカードのデータを読み取ることができない場合はログの解析はできません。
ログ解析ではGPSの位置データと高度データから、機体がどのような地形で飛んでいたかを地図データで確認することができます。
連続であるはずのGPS位置データがとびとびになっていることがログで確認出来たら、これはマルチパスの影響かもしれません。GPSの取得衛星数や水平方向の位置精度を表すパラメータHDOPもログに記録されていれば、GPSの状態がどのようだったか確認することができます。

GPS電波状況

GPSの電波状況はドローンの飛行に影響を与えます。GPSの電波状況を知ることは、ドローンの安定運用のために必要と言えます。

GPS観測データ

GPSの衛星数とHDOPを定点観測しています。時間帯によっては衛星数が減少することが定期的に起きていることが分かります。衛星数が減少することは、地形によってはGPS条件がさらに不利になります。衛星数が減少する時間帯での運用を見直すか、マニュアルモードでの運用を検討するなどが必要になります。観測データを参考にしてください。
GPS_LOG

GPSモニター

GPSの電波状況はドローンを運用する場所、地形によっても変化します。運用場所での電波状況をあらかじめ確認することで、運用計画に役立てることができます。
GPSモニター